明示的な前提で説明する、過去データのワークド例

過去データの例と、分析における限界を学びます。

明示的な前提で説明する、過去データのワークド例

過去データが意味するもの

過去データとは、記録してから後で計算・比較・テストに使う「過去の観測の集合」です。実務では通常、タイムスタンプ、観測された値(たとえば価格)、そして場合によっては追加フィールド(たとえばスプレッドや執行に関する詳細)などが含まれます。重要な考え方は、過去データは「次に何が起きるかについての約束」ではなく、「過去からの入力データ」であるという点です。

ワークド例が役立つのは、すべての前提を言語化することを強制するからです。つまり、どの日時を使ったのか、リターンをどう計算したのか、どのコストを適用した(または適用しなかった)のか、そしてデータが不完全なときに何が起きるのかを明確にします。

ワークド例はどう機能するか(明示的な前提つき)

以下は、ライブの市場データに依存せずに、過去データの仕組みを示すシナリオです。

シナリオ設定(すべての前提)

連続する10日間の観測を使って、単純なルールを分析しているとします。

  1. 日付:Day 1 から Day 10 は固定で、変更しません。
  2. 観測値:各日の「ミッド価格」の履歴データがあります。(これらのミッド価格はデータセットから既に分かっており、リアルタイムで取得していません。)
  3. リターン定義:その日のデイリーリターンを (Close − Open) / Open と定義します。
  4. 固定コストの前提:取引コストを 0.10%/1取引と仮定し、ルールが「trade(取引)」と言うときはいつでも適用します。データセットにコストが含まれていない場合は、(a) コストをモデル化するか、(b) コストなし版をテストしたことを明示する必要があります。
  5. ルールロジック(例):前日のリターンがプラスの日に取引します。そうした取引日では、翌日の Open で買い、同日の Close で決済すると仮定します。
  6. 執行の前提:履歴データセットに記録されている Open と Close をそのまま使って執行できると仮定します(スリッページなし)。

ミニデータセット

Day 1〜Day 10 のこれらの過去リターンを使います。(これらは記録された値であり、与えられたものとして扱ってください。)

  • Day 1: Open 100, Close 102 → return = 0.02 (2%)
  • Day 2: Open 102, Close 101 → return = -0.009803…
  • Day 3: Open 101, Close 103 → return = 0.019802…
  • Day 4: Open 103, Close 103 → return = 0
  • Day 5: Open 103, Close 105 → return = 0.019417…
  • Day 6: Open 105, Close 104 → return = -0.009523…
  • Day 7: Open 104, Close 106 → return = 0.019231…
  • Day 8: Open 106, Close 107 → return = 0.009434…
  • Day 9: Open 107, Close 106 → return = -0.009345…
  • Day 10: Open 106, Close 108 → return = 0.018868…

過去データのルールを適用する

ルールは 前日のリターンの符号 に依存します。

  • Day 1 では「前日」のリターンがないため取引できません。したがって Day 2 から開始します。

取引日とは、Day (t−1) のリターンがプラスのときと仮定します。

  • Day 2: 前日(Day 1)のリターンがプラス → Day 2 を取引。ネットリターン = (Day 2 return) − 0.10% = -0.009803… − 0.001
  • Day 3: 前日(Day 2)のリターンがマイナス → Day 3 は取引なし。ネットリターン = 0
  • Day 4: 前日(Day 3)のリターンがプラス → Day 4 を取引。ネットリターン = 0 − 0.001
  • Day 5: 前日(Day 4)のリターンがゼロ → プラスではないため取引なし(このルールによる)。ネットリターン = 0
  • Day 6: 前日(Day 5)のリターンがプラス → Day 6 を取引。ネットリターン = -0.009523… − 0.001
  • Day 7: 前日(Day 6)のリターンがマイナス → Day 7 は取引なし。ネットリターン = 0
  • Day 8: 前日(Day 7)のリターンがプラス → Day 8 を取引。ネットリターン = 0.009434… − 0.001
  • Day 9: 前日(Day 8)のリターンがプラス → Day 9 を取引。ネットリターン = -0.009345… − 0.001
  • Day 10: 前日(Day 9)のリターンがマイナス → Day 10 は取引なし。ネットリターン = 0

この例が示すこと

このシナリオは、過去データの利用が通常要求するものを示しています。

  • 計算されるフィールドの明確な定義(リターンがどう計算されるか)。
  • ルールのタイミングの明示(次の日に行動するために前日情報を使うかどうか)。
  • コストモデルの前提(ここでは、取引ごとに一定の 0.10%)。
  • 執行の前提(スリッページなし。記録された Open/Close を使う)。

前提が異なれば、同じ過去データセットを使っていても結果は変わります。

重要な制限と失敗パターン

過去データは有用ですが、「ワークド例」が実際の結果とずれてしまう原因となる限界があります。

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